「ホームページを作りたいけれど、いくらかかるのかわからない」「制作会社によって金額に大きな差があるのはなぜ?」と、不思議に思う院長先生方も多いかと思います。
この記事では、これからホームページ制作を検討する歯科医院向けに、「費用の相場」や「業者ごとの違い」「運用に必要なコスト」などをわかりやすく解説します。
解説前の専門用語補足について
解説の前に、業者に依頼する前提知識として、いくつか専門的な用語についてご説明いたします。
WordPress(ワードプレス)
ホームページの内容を自分で変更できる、インターネット上の仕組み(アプリ)です。
以前は、ホームページの内容を少し変更するにも業者への依頼が必要でしたが、WordPressを使ってホームページを作ると、一定の範囲で自分自身で内容を更新することができるようになります。
ただし、細かいデザインや構成の変更には専門的な作業が必要になることが多く、実際には「お知らせ」や「ブログ」など、限られた部分だけを自分で更新するケースが一般的です。
また、WordPressはプログラムを使って動作する仕組みのため、セキュリティ管理が必要になります。
そのため、制作会社に保守管理を依頼し、月々の管理費を支払って運用しているケースも多くあります。
SEO(エスイーオー)/SEO対策
SEOは「検索エンジン最適化」の略で、Googleなどの検索結果で上位に表示されやすくするための取り組みのことです。
たとえば「〇〇市 歯医者」と検索したとき、自院のホームページが上の方に表示されれば、それだけ多くの人の目に留まり、来院につながりやすくなります。
ホームページ制作では、このSEOを意識した構成や文章がとても重要です。
レスポンシブデザイン
パソコンとスマートフォンで見るホームページは、それぞれ画面のサイズが異なるため、以前は別々に設計・制作されるのが一般的でした。
現在は、一つの設計でパソコンとスマホの両方に対応させる「レスポンシブデザイン」が一般的です。
画面の幅に応じてレイアウトが自動で切り替わり、パソコンでは広い画面用、スマホでは狭い画面用の見え方になります。
ただし、ひとつのデザインで両方の端末に対応させるため、制作側にとっては構成がやや複雑になり、手間もかかります。
最近では、ホームページを見ている人の9割以上がスマホからという歯科医院もあります。
そのような場合、スマホだけの表示設計とし、パソコンで見た際にもスマホ用の画面がそのまま表示される形にすることで、制作の手間を軽減し、コストを抑える方法もあります。
どちらの方法が適しているかは、制作会社と相談しながら決めるのが良いでしょう。
歯科医院のホームページを作る費用はどのくらい?
ホームページの制作費は、「どれだけの情報を載せたいか」「何ページ構成にしたいか」「デザインにどこまでこだわるか」などのホームページの規模とどの業者に頼むかによって、大きく変わります。
ここでは、まずホームページの規模を3つのパターンに分けて解説します。
1. 小規模(約10万〜50万円)
- トップページ+7ページ前後
- デザインはテンプレート使用(あらかじめ作られたデザインを他の医院と使いまわす方式)
- 院長プロフィール、診療科目、アクセス程度の情報
費用を抑えつつ、最低限の情報だけを発信したい医院向けのプランです。価格を抑えるため、「掲載する文章はご自身でご用意ください」と言われることもあります。
すでに地域である程度の認知があり、ホームページがなくても患者が安定して来院している医院で、診療時間や所在地など、基本的な情報だけを載せておきたいという方に向いています。
ただし、検索対策(SEO)や更新のしやすさ、独自性のあるデザインについては、ほとんど期待できないと考えておいたほうがよいでしょう。
2. 中規模(約50万〜150万円)
- トップページ+15ページ前後
- WordPressによるお知らせ/ブログ機能付き
- SEOの基本対策済み
- 写真撮影や文章の代筆サービスを含む場合も
もっとも一般的な規模で、費用と内容のバランスがとれたプランです。多くの歯科医院は、この価格帯でホームページを制作しています。
診療案内・スタッフ紹介・医院紹介・アクセス・お知らせなど、来院前に知っておきたい情報を一通り掲載でき、見た目の印象や操作性にもある程度こだわることができます。
制作会社によっては、簡単な原稿作成や写真撮影、スマホ対応、基本的なSEO対策などもこの価格に含まれており、コストパフォーマンスに優れた内容です。
3. 大規模(約150万〜300万円)
- トップページ+20ページ以上
- WordPressによるお知らせ/ブログ機能付き
- SEOの基本対策済み
- 医院の希望を反映したオリジナルデザイン
- 取材/プロカメラマン派遣による写真撮影・原稿ライターによる作成までフル対応
- 動画を活用した治療案内の掲載
- SEO強化、MEO対策、Google広告の連携など、集患支援の仕組みも一括対応
インプラントや審美歯科、矯正治療などの自由診療を扱う歯科医院、大手で分院展開を行っている医院、広い地域からの集患を目指す医院などが選ぶことの多いプランです。
ページ数が多くなるのは、大手医院では診療内容が多岐にわたるため説明ページが増える傾向にあります。
また、自由診療を中心とする医院では、詳しい治療内容や治療前後のビフォーアフター紹介ページを充実させる必要があるため(多いほど患者さんの安心感にもつながる)です。
競合が多い地域や新患の獲得に積極的に取り組みたい医院にとっては、十分に検討する価値のある構成です。
余談1 文章作成にライターは必要なの?
ホームページを作る際に、「文章は自分で書けるから大丈夫」「治療の流れを詳しく書けばいいんでしょ」と考える先生も多いかもしれません。
しかし、ホームページを見た人に「ここで治療を受けたい」と思ってもらい、実際の来院につなげるには、見ている人の気持ちを意識した構成が重要です。
以下のような流れで文章や構成を考えることで、増患効果が高まりやすくなります。
<例:ホームページ構成の流れ>
- 注意を引く … キャッチコピー(例:「安心して通える〇〇歯科」)
- 興味を持たせる … 写真や紹介文で医院の雰囲気を伝える
- 欲求を喚起する … 医院の特徴(丁寧な説明・痛みの少ない治療など)を紹介
- 行動を促す … アクセス案内や予約ボタンなどの導線を設置
このような「伝わる」「行動につながる」文章に整えてくれるのが、ライターに依頼する最大のメリットです。
専門的な内容を患者さんにもわかりやすく、親しみやすい表現に言い換えたり、医院の魅力やこだわりを的確に言葉にしたりするのは、実は意外と難しい作業です。
ライターに依頼すれば、院長へのヒアリングをもとに、内容の構成や表現を整えてくれるため、大幅に時間を節約できるという利点もあります。
もちろん、すでに原稿が用意できている場合や、「自分の言葉で伝えたい・想いがある」という場合は、自作でも問題ありません。
ただし、最終的に文章のプロにチェックやリライト(手直し)だけ依頼しておくと、より完成度の高いホームページに仕上がります。
ホームページの印象は、写真と文章で決まります。
見た目のデザインだけでなく、「ことばの質」にもぜひ注目してください。
余談2 AIに原稿を書いてもらえばいい?
安価なホームページ制作プランでは、「原稿は自分で用意してください」と言われることが多く、またブログ記事の執筆も自分で行う前提になっているケースがあります。
近年はAIを活用して文章を書くことも一般的になっていますが、質の低い内容でそのままホームページに掲載するのは避けたほうが良いでしょう。
Googleは、内容に独自性がなく、他のサイトと似たようなAI生成文章ばかりのページについては、検索順位を下げる対象になる可能性があると明言*しています。
そのため、AIは「文章の構成を考える手助け」や「アイディア出し」など、あくまで補助的なツールとして活用し、文章全体はご自身の言葉で書くようにしましょう。
患者さんに伝えたい想いや、医院ならではのこだわりを込めた“オリジナルの文章”こそが、信頼されるホームページを作るための鍵になります。
* 参考:AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス
余談3 撮影にプロカメラマンは必要?
最低限の情報だけを掲載するホームページであれば、自前で撮影した写真でも問題ないケースはあります。
しかし、集患を意識したホームページや、自由診療にも力を入れていきたい医院の場合は、プロのカメラマンによる撮影を検討する価値があります。
たとえばプロは、以下のような点を意識して撮影を行います。
- 光の入り方・広さ・清潔感などの特徴をうまく捉える
- スタッフの自然な表情を引き出しながら撮影する
- 写真全体に統一感を持たせ、サイト全体の印象を整える
- 写真を通して、見ている人に何を伝えたいかを考える
自分たちで撮った写真とプロの写真を見比べた時に「やっぱりプロは違うな」と感じるのは、ただ値段の高いカメラで適当に撮影しているのではなく、このような背景を考慮した上で撮影しているからです。
このような写真は、見る人に医院の雰囲気がよく伝わり、安心感や信頼感につながります。
ただし、医院のコンセプトにもよりますが、一般的な歯科医院においては「きれいに撮りすぎる」のも注意が必要です。
患者さんが知りたいのは、“実際の医院の雰囲気”です。
にもかかわらず、モデルルームや化粧品広告のような「作られた美しさ」が強調されすぎると、「演出が過ぎていて嘘っぽい」「現実感がない」といった印象を持たれてしまいます。
この点を理解していない(制作会社から指示を受けていない)カメラマンもおり、過度に美しさばかりを追求する“きれい至上主義”になりがちです。
そのため、理想としては「素人以上~プロ未満」のリアルさと、少しだけ整えられた清潔感。
このバランスを取るのが、信頼感のあるホームページ写真を撮るうえでのコツといえます。
大切なのは写真を撮る人が、「何をどう伝えたいのか」を分かっているかどうかです。
業者によって制作金額が大きく違うのはなぜ?
ホームページ制作には、「誰に依頼するか」で価格も内容も大きく変わります。
ここでは、中規模のホームページ(15ページ前後)を例に、同じ内容をそれぞれの制作業者に依頼した場合、どのような金額差や対応の違いがあるのかを比べてみます。
フリーランス(20万〜50万円程度)
- 少人数または1人で対応
- 直接やりとりできるため柔軟性あり
- 費用は比較的安め
- ただしSEOや医療業界の知識が乏しい場合も
ほぼ一人で制作を行うため、料金は中小制作会社に依頼する場合と比べ、2/3〜半額程度に収まることが多いです。
昔は、作業する内容の種類がそれほど広くなかったため、ひとりでホームページ制作を完結できるフリーランスも多くいました。
しかし現在では、「パソコンとスマホの両対応設計」「デザイン」「検索で上位に表示させるための文章作成(SEO)」「写真撮影」「Google Analytics 4(GA4)によるサイト分析」「Google ビジネス プロフィール」など、対応すべき内容が非常に多岐にわたります。
これらすべてを一人で高いレベルでこなせるフリーランスは、決して多くありません。
そのため、フリーランスに依頼する場合は、過去の実績を必ず見せてもらい、信頼できる相手かどうかを見極めることが大切です。
知り合いに「ホームページが作れる人がいる」という理由だけで、実績の確認をせずに依頼するのは注意が必要です。期待していた仕上がりにならないリスクもあります。
中小制作会社(50万〜150万円程度)
- チームで対応するため一定の品質とスピード感
- 医療専門の会社であれば業界知識もあり安心
- 写真・文章・デザインをトータルで依頼できる
中小規模の制作会社では、デザイン・文章作成・SEO対策・サイト分析など、それぞれの分野を得意とする担当者が在籍しており、チームで分担して制作を行うケースが一般的です。
そのため、一定の品質とスピード感が期待できます。
また、歯科医院向けに特化したノウハウを持つ会社であれば、広告ガイドラインや医療分野特有の表現ルールへの理解もあり、安心して任せられる点が強みです。
写真撮影や原稿作成、WordPress導入など、制作に必要な要素をトータルで対応してくれる会社が多いため、「丸投げでも形になる」という安心感もあります。
ただし、中には下請けに丸投げしていたり、テンプレートを流用しているだけの会社もあるため、過去の制作実績を確認し、信頼できるかを見極めることが大切です。
大手制作会社(80万〜250万円程度)
- 大規模な案件に慣れており、安定した品質
- サポート体制が充実している
- 反面、費用は高めで納期も長くなることが多い
- 小規模な案件は断られる場合も
大手のホームページ制作会社に依頼する場合、料金は中小制作会社と比べ、おおむね1.5〜2倍程度に収まることが多いです(※内容によってはさらに高額になる場合もあります)。
また、ホームページの規模が小さいと、「対応できない」と断られるケースもあります。
社内に専門チームが組織されており、デザイン・文章・撮影・SEO・広告運用・分析まで、すべての工程を高い水準で対応してくれるのが特徴です。
大規模な医院や分院展開をしている医院など、関係者が多くプロジェクトが複雑になりやすい場合でも、体制がしっかりしているため安心して任せることができます。
また、契約書やスケジュール、品質管理などの面でも整備されており、「きちんと進めてくれる」という信頼感があり、万が一のトラブル時も対応力が高い傾向があります。
一方で、費用は他と比べて高くなりがちで、納期も長めになる会社が多いです。
ホームページ制作後にかかる管理・サーバー費用
サーバー代・ドメイン代(年間1万〜2万円程度)
ホームページを表示させるために必要なインターネット上の「土地代(サーバー)」と「住所(ドメイン/○○○.jp)」にあたります。
多くの場合、制作会社が代行して管理します。
保守・更新費(毎月3,000円〜1万円)
- WordPressのシステム更新
- セキュリティ対策
- 定期バックアップ
- トラブル対応
契約内容によっては、診療時間の変更や簡単な文章修正を無料で行ってくれることもあります。あらかじめ内容を確認しましょう。
制作業者を選ぶポイント
最後に、失敗しないための業者選びのポイントを重要な順番にご紹介します。
1. ホームページの実績があるか
制作会社のホームページに掲載されている実績を確認し、過去にどのような内容・デザインで手がけているかを見てみましょう。
「デザインが自分のイメージに近いか」「内容が読みやすいか」「自分が閲覧者だったら、この医院に行ってみたいと思うか」など、見ている人の目線でチェックすることが大切です。
2. 見積もりが明確か
制作費の内訳が不透明な業者は避けたほうが無難です。「デザイン料」「ライティング費」「SEO対策費」など、項目ごとに明記されていると安心して依頼できます。
3. 契約内容と支払い条件
トラブルを防ぐために、契約書の内容は細かく確認しましょう。特に以下の点は見落とされがちです。
- 支払い方法や分割の可否
- ドメインやサーバーの所有権が誰にあるか(医院側が持てるか)
4. 更新しやすい仕組みか
医院からのお知らせやブログなど、日々の情報を自分たちで簡単に更新できるかも重要です。
WordPressの導入実績があるか、操作マニュアルやサポート体制があるかを事前に確認しましょう。
5. 医療業界に詳しいかどうか
医療分野では広告ガイドラインや法的な制限があるため、「症例写真の掲載ルール」や「ビフォーアフター表現の注意点」などに対して、ある程度の理解がある業者のほうがスムーズです。
とはいえ、これらのルールは厚生労働省が基準を公開しており、制作会社・医院側でも確認可能です。
ガイドラインに従って制作すれば問題ないため、業者が医療にとても詳しいかは、そこまでこだわる必要はありません。
むしろ、相談に応じながら慎重に対応してくれる姿勢の方が重要です。
最後にまとめ
歯科医院のホームページ制作費用は、内容や依頼先によって大きく異なりますが、おおよその相場や内訳を理解しておけば、適正価格で納得のいくホームページが作れます。
「どこに頼むか」「どこまで自分でできるか」「公開後の運用をどうするか」などを総合的に考え、医院の方針や予算に合った制作方法を選びましょう。