歯科医院の開業を考えるとき、居抜き物件という選択肢があることもご存じでしょうか。
新規開業に比べ、少ない資金で開業できる一方、注意すべき点もあります。
この記事では、歯科医院の居抜き物件とは何か、費用・メリット・デメリット・開業スピード・新規開業との違いをわかりやすく解説します。
歯科医院の開業を検討中の方は、ぜひご参考ください。
なお、ここで取り上げている新規歯科医院の例は、ユニット2〜3台、標準的な内装と医療機器を対象としています。
歯科医院の「居抜き物件」とは?
居抜き物件とは、前の医院の設備や内装が残されたまま、譲渡・継承(売買)される物件のことです。多くの物件には、
- 歯科用ユニット
- レントゲン室・配管設備
- 受付・待合スペース
- コンプレッサー・バキューム
- カルテ類(紙/PCデータ)
などが残っており、歯科医院がすぐに開業できる状態になっています。
また、スタッフをそのまま引き継げるケースも多く、ゼロからの開業に比べて準備期間が短くて済みます。
初期費用も抑えられることから、居抜き物件は、後継者不足などを背景に、注目されている開業方法の一つです。
歯科医院を居抜き物件で開業する4つのメリット
1. 初期費用が抑えられる
歯科医院を新規に開業する場合、一般的に初期費用として5,000万円前後*が必要になると言われています。
とくにユニットやレントゲンなどの医療機器は高額で、すべてを新品でそろえるとなると、機器代だけでもかなりの負担になります。
しかし、居抜き物件を利用すれば、前の歯科医院が使用していた内装や設備をそのまま引き継げるため、ゼロから準備する必要がなく、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
実際には、1,000万〜2,000万円程度に収まるケースも多く、新規開業に比べて数千万円単位のコスト削減が見込めます。
また、受付カウンターや待合室の家具、トイレなども再利用できることが多く、医療機器だけでなく内装や外装の工事費も含めて、全体の開業資金を抑えやすくなります。
特に、初めての開業を目指す歯科医師にとっては、非常に現実的で魅力的な選択肢と言えるでしょう。
* 新規開業の費用は、立地や診療内容により異なります。都心の審美歯科では1億円を超えることもありますが、一般的な保険診療中心の医院なら3,000万〜5,000万円が目安です。
2. 開業スピードが早い
通常の新規開業では、物件探しから内装工事、設備の選定や各種手続きまで多くの工程が必要で、準備に1年前後かかることもあります。
その点、居抜き物件なら内装や設備がすでに整っているため、設計や業者との打ち合わせが最小限で済み、最短1〜2か月での開業も十分可能です。
また、準備期間が短ければその分、テナント賃料などのランニングコストも抑えられるため、経営面でもメリットがあります。
「できるだけ早く開業したい」「短期間で収益化したい」と考えている歯科医師にとって、居抜き物件は有効な選択肢です。
3. 集患・運営の立ち上がりがスムーズ
すでに地域の方々に「歯科医院の場所」として認識されているため、居抜き物件での開業は、集患の立ち上がりがスムーズです。
前医院の患者がそのまま通院を継続することもあり、新規開業に比べて早い段階から安定した運営が見込めます。
さらに、前の医院スタッフを引き継ぐことができれば、求人募集や面接、研修といった人材確保の手間と時間を大きく省くことができます。
加えて、過去の経営実績や患者数のデータがある場合には、それをもとに直近の売上や将来的な収支の見通しを立てやすいことも大きな利点です。
こうした条件がそろえば、開業初期のリスクを最小限に抑えつつ、短期間で黒字化を目指すことも可能になります。
4. 融資審査が通りやすく、資産の目減りリスクも低い
初期費用が抑えられるという点は、金融機関にとってもリスクが低く見えるため、融資審査が通りやすくなる要因の一つとなります。
自己資金の割合が高まれば、その分、借入額を減らせることにもつながります。
また、資産価値の目減りリスクが少ないという点も、居抜き物件ならではの特徴です。
たとえば、将来的に医院を売却や廃業する場合、新規開業で多額の初期投資をしていれば、売却時に大きな損失(目減り)が発生する可能性があります。
その点、居抜き物件は取得額がもともと低いため、仮に売却価格が取得時の2割程度にとどまったとしても、損失額は限定的です。
もちろん設備や立地によって実際の売却額は変動しますが、開業コストを抑えた分、資産の目減り幅も比較的小さく済みます。
居抜き物件の3つのデメリット
1. レイアウトの自由度が低い
内装や間取り、設備の配置がある程度固定されているため、自分の理想とする診療スタイルや医院のイメージに合わない可能性があります。
診療導線や受付・待合スペースの配置を自分好みに変更したいと考えても、大幅な改装には多くの費用と時間がかかるため、現実的ではないケースもあります。
また、歯科医院の居抜き物件自体が数として少ないため、立地・間取り・設備条件などすべてを満たす物件に出会えるとは限りません。
タイミングよく理想に近い物件と出会えることもありますが、希望と合わない条件でも妥協を迫られる場合があります。
医院の設計や内装に強いこだわりがある方は、はじめから新規開業を検討した方が、満足のいく医院づくりができる可能性が高いでしょう。
2. 医療機器の状態次第で追加コストが発生することも
前の歯科医院が使用していた医療機器や内装設備をそのまま引き継げる点は、居抜き物件の大きなメリットですが、その一方で、古い設備が残っている場合には注意が必要です。
たとえば、レントゲンやユニットなどの機器がかなり以前に導入されたものであったり、定期的なメンテナンスが行われていなかった場合、故障のリスクが高くなります。
その結果、想定外の修理費や機器の買い替えが必要となり、「初期費用を抑えたつもりが、かえって出費がかさんでしまった」というケースも実際に見られます。
居抜き物件を選ぶ際は、導入されている機器の年式や使用状況、メンテナンス履歴などを事前にしっかりと確認しましょう。
3. 以前の歯科医院の評判が影響するリスク
居抜き物件で開業する場合、以前の歯科医院が地域に持っていた評判やイメージを、そのまま引き継いでしまう可能性があります。
過去の医院が丁寧な対応で好評だった場合にはプラスに働きますが、逆に対応の悪さやトラブルが口コミサイトなどに残っていると、悪い印象を背負ってしまうこともあります。
そのような場合は、譲渡価格の交渉材料とし、評判の分だけ値下げを求めることも一つの手です。
そして浮いた費用で、医院が新しく生まれ変わったことを伝えるポスティングやリニューアル告知を周辺地域に配布しましょう。
Googleの口コミやホームページにも、院長・方針・体制が変わったことを明示することで、過去の悪印象を払拭することが可能です。
マイナスのイメージを引き継がないためには、こうした広報活動がとても重要になります。
居抜き物件の選び方とチェックポイント
居抜き物件で開業する際は、「そのまま使えるからお得」と安易に判断せず、内見時には次のような点を丁寧に確認しておきましょう。
まず意識したいのは、これまでの章で紹介した主なデメリットに関わる部分です。
- 自身の診療スタイルや理想とする医院のイメージに合っているか
- 医療機器の状態や年式に問題がないか(修理・更新の必要がないか)
- 前医院の評判やGoogleなどの口コミにネガティブな印象が残っていないか
さらに見落とされがちですが、歯科医院の売却理由を事前に確認しておくことも重要です。
理由によって、患者の引き継ぎや地域での信頼度、設備の価値などに大きく影響が出る場合があります。
以下に代表的な売却理由と、それぞれの注意点をまとめました。
1. 院長が高齢・病気のため引退
私たちが仲介を行う中で最も多いご相談の一つが、「引退したいが後継者がいないため、医院を譲渡したい」という理由による売却です。
場所にもよりますが、患者さんも院長とともに高齢である場合が多く、院長が急に変わると不安を感じやすくなります。
院長先生がまだ現役で働ける状態であれば、事前に話し合い、一定期間だけ“院長と一緒に診療を行う引継ぎ期間”を設けることで、患者さんに安心感を与え、スムーズな移行が期待できます。
また、周辺に若い人やファミリー層が多い場合は、これまでの患者層を大切にしつつ、新しい層を取り込むのも有効です。
その際は、医院の認知向上のため、リニューアル告知や広告費が必要になることもあります。
2. 院長が急逝したケース(死亡)
急な事情で医院が閉鎖された場合は、残されたスタッフからの情報をもとに引き継ぐことになります。
院長が亡くなってから長期間、代診の先生が確保されていなかった場合は、すでに患者さんが離れている可能性が高く、過去に通っていた患者さんが戻ってくるとは限りません。
このようなケースでは、過度に既存患者数へ期待せず、「設備を引き継ぐ」という観点で検討し、改めて地域での信頼を築くつもりで運営を考える必要があります。
3. 法人が分院長を確保できずに撤退
最近では、分院展開していた法人が、人材不足のため分院を維持できなくなり撤退するケースが増えています。
たとえば、急に院長や開設管理者が退職し、後任が見つからないまま閉院に至るなどの理由です。
このような場合、医院の設備や運営体制が整っており、立地や周辺環境も良好なことが多く、条件に合えば良質な物件である可能性があります。
購入後、すぐに安定した医院運営ができるケースも少なくありません。
4. 経営不振による廃業
この理由での売却には、特に慎重な判断が必要です。
「患者が少ない」「立地が悪い」「口コミの評価が低い」など、根本的な問題が残っている場合が多いためです。
ただし、経営不振の原因が明確であり、ご自身がその改善策を実行して立て直せると判断できる場合は、物件価格が安く設定されていることもあり、コストを抑えながら開業できる可能性があります。
5. 資金確保のための医院売却
医院の経営とは直接関係なく、私的な事情(離婚や相続、他事業の資金捻出など)により売却されるケースもあります。
このような場合、医院単体では黒字経営が殆どで、集患基盤や内装・設備の状態も良好なことが多いため、経営状況を確認し問題がなければ、有力な選択となります。
以上のように、医院の売却にはさまざまな背景があります。
どの理由であっても、「カルテ数」「レセプト枚数」「自費収入」「患者層」などのデータを事前に確認し、納得できる情報開示がされている物件を選ぶことが、後悔しない購入の第一歩となります。
居抜き物件で歯科医院を開業するまでの流れ
居抜き物件を活用した歯科医院の開業は、購入からオープンまでの期間が比較的短いという特徴があります。
ただし、理想的な物件がすぐに見つかるとは限らず、物件探しの期間にはバラつきがあります。
ここでは、物件探しから実際の歯科医院開業までの主な流れをご紹介します。
1. 物件探し
まずは、希望するエリアや立地条件、予算などの大まかな方針を明確にしましょう。たとえば、「都内か郊外か」「駅前か住宅街か」など、ご自身の診療方針やライフスタイルに合った立地を検討します。
条件がある程度まとまったら、当社など歯科医院の居抜き物件を専門に扱う仲介会社に相談するのがスムーズです。
すぐに該当物件が見つからない場合でも、希望条件を伝えておけば、条件に合致する物件が出た際に優先的に紹介してもらえます。
2. 資金調達
購入したい物件が見つかったら、具体的な資金計画を立てます。自己資金に加えて、必要に応じて金融機関のローンを利用します。
開業資金には、譲渡費用のほかに、リフォーム費や広告宣伝費、運転資金なども含めて検討します。
当社では、開業資金のアドバイスや金融機関とのやり取りのサポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。
3. 内装の調整・機器の見直し
譲渡契約が成立したら、自分の診療方針に合わせて、施設の変更を行います。
必要に応じて、医療機器の入れ替え・導入や導線の改善を目的とした部分的な内装工事などが考えられます。
すべてを一新する必要はありませんが、使い勝手や患者さんの印象に関わる箇所は慎重に検討しましょう。
4. スタッフの採用・再雇用の判断
医院の体制づくりも重要なステップで、在籍していたスタッフの継続雇用を希望するかどうかを面談などで判断します。
人手が足りない場合は、求人募集を行い、新たにスタッフを採用します。採用には時間がかかるため、早めの準備が肝心です。
5. 広告・周知活動
医院のイメージが前医院と異なる場合や、リニューアルを強調したい場合は、積極的な広報活動が必要です。
ホームページやGoogleビジネスプロフィールの内容更新に加え、地域へのポスティング、地域新聞への広告や内覧会の開催も効果的でお勧めです。
開院前から地域の方に医院の存在や雰囲気を知ってもらうことで、スムーズな集患につながります。
6. 歯科医院の開院
準備が整ったら、いよいよ開業です。開業直後の1~2か月は患者数が安定しないことが一般的です。
最初は焦らず、事前に想定していた計画に沿って状況を見極めながら、必要に応じて広告や診療体制の見直しを行いましょう。
柔軟に調整しながら軌道に乗せていくことが、長く安定した運営につながります。
歯科医院の居抜き物件まとめ
歯科医院の居抜き物件は、初期投資・開業スピード・地域認知という3つの大きな強みがあります。
一方で、内装の自由度や既存設備の状態には注意が必要です。
ご自身の理想とする開業イメージと合っているかどうかを事前にしっかり確認し、専門家のサポートを受けながら調査を進めることで、リスクを抑えつつ低コストでの開業を実現できます。
当社では、駅近・好立地の歯科医院居抜き物件を多数掲載中です。お気軽にご相談ください!